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とある休日の昼下がり、彼女はせっせと書類に文字を書き込んでいました。
そのとき、
「コロン。」
彼女の持っていたペンが床に落ちたのです。
ええ。嫌な予感はしていました。
彼女はじっと私を見つめ、そして、唐突に、なんの予告もなく、なんの前ぶれもなく、魔法の言葉を唱えました。
「最初はグー・・・」
このときすでに、私は彼女の謀略にまんまとはまってしまっていたのです。
「ジャン・・・」
もう、思考の時間はありません。
「ケン・・・」
何か策を打ち出す暇もありません。
「ポン!!」
受け身の対応者となった私は、なすすべなく、ただ流されるままに、反射的にいつも自分が最初に出してしまう「チョキ」をかざしていました。
その後のことはよく覚えていません。
一体何が起こったのか、自分の中で整理がつかないまま、私は彼女のペンを拾い上げ、彼女に差し出していたのです。
ペンを受け取るなり、彼女は一言、微笑みながら私にお礼を言いました。
「ありがとう」と。
そして彼女は何事もなかったかのように自分の作業を再開しました。
・・・今回の事件は私に大きな気づきを与えてくれました。
次またじゃんけんを仕掛けられたら、断ればいいのです。
これで彼女の策略にハマることは無くなります。
しかし、私はそうはしないでしょう。
そして、そうしないことを彼女は知っている。
私はきっとまた、同じようにじゃんけんをし、負けて、あるいは勝っても、彼女の落としたペンを拾い、彼女に手渡すでしょう。
結局、私に選択肢はありません。
変わらぬ運命。
そう、私は最初から詰んでいたのです。
自分の運命を悟り、いつ来るかわからない次の機会への心の準備を整え、私はテーブルの上の冷めたコーヒーを口に運び静かに喉を鳴らす。
とある休日の昼下がり、彼女はせっせと書類に文字を書き込んでいました。
夫婦が楽しく過ごすためのポイント
パートナーの落としたペンを拾ってあげる
じゃんけんに強くなる
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