夫婦の間に子供ができ、産休・育休をとる際、多くの場合気になるのは「お金の問題」です。
産休・育休中に国や夫婦が働いている会社からもらえる給付金はいくつかありますが、当然、申請しないと受け取れないものもあります。
その中でもここでは、産休・育休中に給付される「育児休業給付金」について、
- 育児休業給付金制度の内容
- 給付金額の計算方法
- 育児休業給付金の申請方法
などをわかりやすく紹介していきます。
育児休業給付金をもらうことで夫婦の家計も大変助かります。
夫婦のどちらも必ずしっておくべき制度ですので、これから出産を控えている夫婦は本記事を参考に出産から育休の準備としてお役立てください。
目次(タップで各項目へジャンプできます)
夫婦が知っておくべき「育児休業給付金」とは
まず、夫婦で抑えておくべき「育児休業給付金」とはどのようなものかについて紹介しておきましょう。
育児休業給付金とは
育児休業給付金とは、育児休業中に育児で働くことが難しい人が生活に困らず子供を養育できるように国から給付金をもらえる制度のことです。
基本的には育休取得者に対して、子供が1歳になるまでの期間に、毎月過去賃金の67%(育休開始から6か月経過後は50%)が支給されます。
給付金を受け取るには
- 一定の条件を満たしている状態(後述)で
- 育休中に育児休業給付金の申請をする
必要があります。
参考
・児休業給付の内容及び支給申請手続について|厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)
夫婦が育児休業給付金をもらえる期間
育児休業給付金をもらえる期間は、基本的に産休終了直後から育休の対象としている子供が1歳になる前日までとなります。(下図参照)
画像:育児休業給付の内容及び支給申請手続について|厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)
また、条件により育児休業給付金をもらえる期間が延長される場合もあります。(記事の後半で解説しています)
支給されるタイミングは2ヶ月に1度が基本となります。本人の希望により1ヶ月ごとに受け取ることも可能です。
尚、子供が生まれて8週間(約2ヶ月)は産休となり育児休業期間には含まれませんので、夫婦が育児休業給付金を受け取ることはできません。
子供が生まれて1~2ヶ月後に育児休業給付金の申請手続きを行うことになるので、最低3ヶ月ほどは給付金を受け取ることができないことに夫婦で注意・認識しておきましょう。
育児休業給付金をもらえる人(夫婦)の条件
育児休業給付金を受け取ることができる対象となる条件は以下の条件に当てはまる人となります。
被保険者(雇用保険に入っている)である
「一般被保険者」と「高年齢被保険者」に当たる被保険である必要があります。わかりやすく言うと雇用保険に入っている人が対象になります。
1歳未満の子供がいる(「パパママ育休プラス制度」を取得する場合は1歳2ヶ月未満の子供)
育児休業給付金を支給されるのは、基本的には出産してから1歳未満までの子供がいる人になります。
パパママ育休プラス制度(母親と父親の両方が育休を取得する場合、育休期間を延長できる制度)を活用している人であれば1歳2ヶ月までが支給対象となります。
また、保育園に預けることができないなどの場合は1歳6ヶ月または2歳までが支給対象となります。
育休後も継続して現在の企業に在籍する
育休終了後も現在所属している会社で継続して働く(意向を示す)必要があります。
育休終了とともに会社を退職する意向を会社側へ伝えている人は対象外となるので注意しましょう。
育休開始前の2年間に、1ヶ月間で11日以上働いた月が12か月以上ある
育休開始前の過去2年間に11日以上働いた実績のある月が12ヶ月以上必要になります。
尚、病気や負傷などにより働くことができず継続して30日以上賃金を受け取ることができなかった場合は、その日数分が条件の2年間に加算されます。
例えば過去2年間に病気で働けない期間が連続3ヶ月あったら、過去2年3ヶ月の間が対象になります。
育休中の各月において育休開始前の賃金(給料)の8割以上が支払われていない
育休に入る前までにもらっていた平均賃金(給料)の8割以上を受け取っていないことが条件となります。
例えば、毎月20万円の賃金を受け取っていた人であれば、20万円×80%=16万円以上が支払われていない必要があります。
育休中に就業している日数が各月10日以下
育休中に働いている日数は各月10日以下(10日を超える場合は就業している時間が80時間以下)でなくてはなりません。育休中は育児に専念してくださいということですね。
育児休業期間中、1か月間に10日を超えて就労した場合、その際の就労に対する賃金額を、次の子(2人目以降の子供)に係る育児休業を取得した際の育児休業給付金の支給額の算定に使用する場合があるため、次の子に係る育児休業給付金の支給額が減額になる可能性があります。
以上が育児休業給付金を受け取るための条件となります。
条件に当てはまっているか夫婦合わせてチェックしておきましょう。
参考として、以下に育児休業給付金の受給条件の原文を引用しておきますので、必要の際にご確認ください。
1歳(一定の場合は1歳2か月。さらに保育所等に置ける保育の実施が行われないなどの場合は1歳6か月又は2歳。7頁、8頁参照。)に満たない子を養育するために育児休業を取得する被保険者の方(注1)で、育児休業開始前2年間(注2)に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある完全月(過去に基本手当の受給資格や高年齢受給資格の決定を受けたことのある方については、基本手当の受給資格決定や高年齢受給資格決定を受けた後のものに限ります。)が12ヶ月以上ある方が対象となります。
(注1)支払い対象者は男女を問いません。被保険者とは、一般被保険者及び高年齢被保険者を言います。以下、このリーフレットにおいて同じです。
(注2)育児休業開始日前2年間に疾病・負傷等の理由により引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかった方については、これらの理由により賃金の支払いを受けることができなかった日数をこの期間に加えた日数(最大4年)となります。
※同一の子についての2度目以降の育児休業は、原則として支給の対象となりません。ただし、配偶者の出産後8週間以内の期間内に、父親が育児休業を取得した場合には、再度の育児休業が可能となり、支給要件を満たせば給付金の対象となります。
※育児休業を開始する時点で、育児休業終了後に離職することが予定されている方は、支給の対象となりません。
☆育児休業を開始下被保険者が期間雇用者(期間を定めて雇用される方)である場合は、上記のほか、休業開始時において同一事業主の下で1年以上雇用が継続しており、かつ、子が1歳6か月までの間(保育所等における保育の実施が行われないなどにより子が1歳6か月後の期間について育児休業を取得する場合は、1歳6か月後の休業開始時において2歳までの間)に、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないことが必要です。
夫婦が受け取れる育児休業給付金の金額と計算方法
育休中にもらえる育児休業給付金の金額はいくらなのか、その計算方法や気をつけるポイントについて紹介していきます。
夫婦で確認し、育休中の家計管理の参考としてみてください。
育児休業給付金でもらえる金額と計算式
各月ごとの支給額は、原則として以下の計算式で算出されます。
育休開始から6か月間
計算式
=休業開始時賃金日額(月の賃金) x 支給日数 x 67%
つまり、育休開始から6か月間は
=産休・育休前過去6か月間の月の平均給料 x 67%
が支給されます。
例)平均給料が20万円だった場合
20万円 x 67% = 13万4,000円
育休開始から6か月経過後~育休終了まで
計算式
=休業開始時賃金日額(月の賃金) x 支給日数 x 50%
つまり、育休開始から6か月経過後~育休終了までの間は
=産休・育休前過去6か月間の月の平均給料 x 50%
が支給されます。
例)平均給料が20万円だったら場合
20万円 x 50% = 10万円
産休・育休にかかわるお金を計算できるサイト
以下のサイトでは産休・育休にかかわる以下のお金
- 社会保険料免除額
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 育児休業給付金
について、自分の給料ごとにシミュレーションで計算することができます。
自分が産休・育休に入ったらどのくらいのお金が支給されるのか知る目安になりますので夫婦で活用してみてください。
関連サイト▼
あなたの産休・育休の期間と金額を自動計算します。|社会保険労務士法人アールワン
(補足)育児休業給付金の計算式と用語の説明
基本的に、育児休業給付金の話では、1ヶ月=30日として考えられています。
「休業開始時賃金日額」とは、産休・育休前の過去6か月間の平均給料から「1日あたりにするといくらの給料をもらっていたか」を算出したものです。
産休・育休開始前過去6か月の平均給料は、
産休・育休開始前の6か月間にもらっていた給料 ÷ 180日(30日 x 6か月間)
で計算します。
たとえば、過去6か月間の月の平均給料が20万円だった場合、6か月で120万円もらっているので、
一日あたりの給料
120万円/180日=6,667円
さらに、この1日あたりの給料(休業開始時賃金日額)に30をかけたものを「賃金月額」と呼び、過去6か月の平均給料として表されます。
基本的には先に説明している
産休・育休前過去6か月間の月の平均給料 x 67%(50%)
ととらえておけばOKです。
(補足)育児休業給付金でもらえる金額の上限と下限
育児休業給付金でもらえる金額には上限と下限があります。
- 上限:過去6か月間の月の平均給料が450,000円を超える場合は、450,000円が上限
- 下限:過去6か月間の月の平均給料が77,000円を下回る場合は、77,000円が下限
(※わかりやすくするために細かい端数は無視しています。)
つまり、わかりやすく整理すると、
月の給料が
- 77,000円未満の人
⇒ 77,000円 x 67%(6か月経過後は50%) - 77,000円~450,000円の範囲内の人
⇒ 月の給料 x 67%(6か月経過後は50%) - 450,000円を超える人
⇒ 450,000円 x 67%(6か月経過後は50%)
となります。
【注意】育休中に働いて給料をもらっていると、もらえる支給額が減る場合があります
育児休業給付金は基本的に「働いていない」「会社から給料をもらっていない」ことが条件として支給されます。
しかし、「育休に入る月に少し働いた」あるいは「育休中に訳あって働く必要があった」などの理由から給料を受け取っていた場合、もらえる育児休業給付金の金額が減ったり、最悪支給されない場合があるため注意が必要です。
育休中に受け取った給料と支給される育児休業給付金の関係については以下のように条件が決められています。
過去6か月の平均給料とくらべて、育休中にもらった給料が
- 13%以下
⇒ 月の給料の67%が支給される - 13%を超えて80%未満
⇒ 月の給料の80%に当たる金額から、給料として受け取ったものを差し引いた金額が支給される。
(全体で受け取るお金は変わらない(損はしない)) - 80%以上の場合
⇒ 支給されない。
混乱しそうですが、結論、育休中に「働いていない」「会社から給料をもらっていない」状態なら心配する必要はありません。
夫婦で確認してよく理解しておくようにしましょう。
夫婦が育児休業給付金を受け取る流れと申請方法
ここからは夫婦が育児休業給付金を申請する際の流れと申請方法について詳しく紹介していきます。
育児休業給付金の申請から受け取りまでの流れ
育児休業給付金を申請して受け取る流れは以下のようになります。
- 産休・育休・給付金などについて会社へ相談
(自分 ⇒ 会社) - 自分の勤めている会社が受給資格の有無をハローワークへ確認
(会社 ⇒ ハローワーク) - 受給資格の有無について自分へ通知される
(ハローワーク ⇒ 会社 ⇒ 自分) - 受給資格がある場合、必要な書類に記入して会社経由でハローワークへ提出
(自分 ⇒ 会社 ⇒ ハローワーク) - 支給決定後、約1週間で育児休業給付金が指定の口座に振り込まれる
初回は1~5番までを行いますが、初回以降は2ヶ月に1回書類を記入して会社へ提出することになります。
また、夫婦の労働状況によって、育児休業休業給付金の受給資格が無い場合は「育児休業給付受給資格否認通知書」を受け取ることになります。
申請に必要な書類
受給資格がある場合、育児休業給付金を申請するときに会社から受け取る書類の例です。
育児休業給付受給資格確認通知書
自分に育児休業給付金の受給資格があること、支給金額、支給される期間などが記載されています。
画像:育児休業給付の内容及び支給申請手続について|厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)
育児休業給付金支給申請書
育児休業給付金を申請するための書類です。必要事項を記入して会社へ提出します。
画像:育児休業給付の内容及び支給申請手続について|厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)
これらの書類を基本に、そのほか産休・育休に関する書類を会社から受け取ることになりますので、夫婦でよく目を通して申請もれのないようにしておきましょう。
育児休業給付金の延長
育児休業給付金は条件により最大で子供が2歳になる前日までの期間受け取ることができます。
画像:育児休業給付の内容及び支給申請手続について|厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)
育児休業給付金の受け取りを延長できる人は以下の理由のいずれかに該当する人となります。
育休終了後に子供を認可保育園へ入れたいが、当面は認可保育園に入れない
子供が1歳になる日または1歳6ヶ月になる日の後について、認可保育園への入園を希望して申し込んでいるが、当面入園の予定がなく保育が実施されない場合。
要は、育休終了後に子供を認可保育園へ入れたいが、認可保育園に入ることができる見込みがない夫婦の場合です。
認可保育園への入園申し込みを行っていなかったなど復職の意思がない場合や、無認可保育園への入園申し込みは適応されませんので注意しましょう。
育休終了後に子供の世話をする予定だった人が、事情により世話ができなくなった
子供が1歳になる日または1歳6ヶ月になる日の後について、日常的に子供の世話をする予定だった人が、子供の世話をすることができなくなった夫婦の場合です。
具体的には、子供が1歳になる日または1歳6ヶ月になる日の後の期間について、
- 配偶者が死亡したとき
- 配偶者が怪我や病気、障害などにより子供の世話が難しいとき
- 配偶者が離婚して、配偶者が子供と同居しないことになったとき
また、育休をとっている母親自身が
- 6週間(双子以上の妊娠の場合は14週間)以内に出産を予定しているとき
⇒育休後すぐに出産予定のとき - 産後8週間が経過していないとき
⇒育休中に新たな子供を出産したとき
これらの条件のうちいずれかに該当した場合は、育児休業給付金の支給期間を延長することができます。
延長申請に必要な書類
どの条件であっても、「育児休業給付金支給申請書」は必要になります。
また、それぞれの延長理由によって申請に必要な書類が変わってきます。夫婦で確認しておきましょう。
育休終了後に子供を保育園へ入れたいが、当面保育園に入れない場合
- 市町村が発行した保育所等の入所保留通知書など、当面保育所等に置いて保育が行われない事実を証明することができる書類(発行できない場合はハローワークに相談)
育児をする予定だった配偶者が死亡したとき
- 世帯全員について記載された住民票の写し
- 母子健康手帳
配偶者が怪我や病気、障害などにより子供の世話が難しいとき
- 保育を予定していた配偶者の状態についての医師の診断書等
離婚して、配偶者が子供と同居しないことになったとき
- 世帯全員について記載された住民票の写し
- 母子健康手帳
育休をとっている母親自身が、6週間(双子以上の妊娠の場合は14週間)以内に出産を予定しているとき、または産後8週間が経過していないとき
- 母子健康手帳
育児休業給付金を延長する自身の理由に沿って申請書類を準備しましょう。
育児休業給付金についての気になるポイントQ&A
ここでは、育児休業給付金についてのよくある質問を記載しておきましょう。
Q. 2人目以降の子供を妊娠した場合は支給されるの?
A. 支給されます。ただし、育児休業給付金を受け取ることができる条件を満たしている必要があります。
会社を退職しているなど、雇用環境が変わったときは改めて条件を確認しておきましょう。
Q. 2人目以降の子供を妊娠・出産した場合は支給される金額は減ってしまうの?
A. その時の状況によります。
産休・育休の期間は、育児休業給付金の算出には含まれないため、1人目の育休終了後すぐにまた産休・育休に入れば支給される金額は前回のものと同じになります。
育休終了後、働く時間を減らすなどして会社からの賃金が減っていた場合、育児休業給付金として支給される金額は減ります。
Q. 産休・育休復帰後、またすぐに産休・育休に入ることはできる?
A. 可能です。ただし、職場に迷惑をかけることも多くなるので、角が立たないようにあらかじめ会社と相談しておくとよいでしょう。
また、2人目以降の産休・育休からの復帰後に社内で働くのが気まずいというケースも考えられますが、産休・育休に入る前に退職の意向を示していると育児休業給付金がもらえなくなってしまうので注意しましょう。
そのほかのよくある質問は以下の厚生労働省のページにて記載されていますのでこちらもあわせて目を通してみてください。
関連サイト
Q&A~育児休業給付~|厚生労働省
育児休業給付金についてまとめ
育児休業給付金は産休・育休に入った家庭・夫婦を支えてくれる重要な制度です。
支給されるための条件はありますが、子育てしていく上で大変助かるものなので、可能な限り申請するようにしましょう。
そもそも夫婦でこの制度の存在も知らなかった、知っているけどよくわからないというケースもありますので、本記事を参考にが育児休業給付金について理解を深めていただけたら幸いです。